旦那様と、波乱?

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 ふと、一番初めに過ごした一夜を思い出す。  あの夜は最高だった――、と同時に違和感はあった。  まず美咲は下戸である。あまりお酒を沢山飲んでいる姿を見た事がない。  ところがその晩は、ワインを五杯も飲んでいた。かなり早いペースで。まるで何かから逃れようとするかのように。  思い当たる事があるとすれば、涼からプロポーズ紛いな事をされたと言っていた位か。  かなり酔っ払っていたが、一応受け答えは出来ていたし、俺の事をずっと前から好きだと言っていた。  一番は、美咲の方から俺を誘惑してきた事だ。  美咲は箱入り娘で、色恋沙汰にはあまり縁がなさそうな雰囲気を持っている。事実、俺が知る範囲で恋愛関係になった男は俺以外にいない。そして男性経験も一人しかいないのは、その一人である俺が十二分に分かっている。 「どういう事だ……」  涼の事も含めて、これはちゃんと美咲とじっくり話し合わなければならないな……。 「ちょっと悠真。なんかすごい怖い顔になってるんだけど……」 「ああ、ごめんね」  思わず寄っていた眉間のシワを指先で伸ばしていると、何やら静かな店内に相応しくない騒がしい足音が近付いてくる。一体、何事だろうかと顔を上げると同時に、テーブルに男の骨ばった手が置かれた。
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