旦那様と離婚の条件

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 ほんの一束の毛先を指先で弄ばれているだけなのに、不意に近付いた距離に心臓が止まるかと思った。思わず固まってしまった私の様子を見て、悠真は息を吐くように少し笑う。 「相変わらず、男慣れしてないね」 「そりゃそうよ……」  なにせ、こちらはお嬢様育ちで将来政略結婚するって分かっていたから、高校生まで恋愛なんかするものかと自制していた。  今年二十三歳になるけれど、まだ彼氏なんていた事は無い。  ……旦那様はいるけど。  お店の人がデセールを運んでくる前に、悠真はあっさりと手を離した。「そういえば結婚記念日のプレゼント渡してなかったね」とウェイターに合図する。どうやら先にお店に運んでいたみたい。  頼まれたウェイターが運んできた大きめの紙袋を見て、私は目を丸くした。 「え、なになに?今年の大きくない?!」 「そう?」  事も無げに首を傾げた悠真は、ウェイターから紙袋を受け取る。  去年はダイヤモンドが連なったイヤリングだった。カラットもクラリティも目の肥えた私でも最高級の物と分かる位の代物も使われていて、なんだか気が引けてしまったのよね……。  誕生日には、揃えるようにしてネックレスも貰ったし……。
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