離婚を考えるまでの――

1/8
前へ
/154ページ
次へ

離婚を考えるまでの――

 ―――――――――――――――  ―――――――――― 「ちょ……!」  家に帰るなり唇を奪われる。やや深めのキスを玄関でされ、非常に機嫌が良くなった悠真と共にリビングへと向かう。 「やっと美咲が俺の嫁だって世間に言えた。今日のドレス姿の美咲は本当に可愛かった」  上機嫌でサラッと私を褒める悠真に、顔を赤くする。まだまだ彼の甘さにはどうしても慣れない。 「今度は結婚式で美咲のドレス姿が見たいな」  満たされた笑みを見せる悠真につられて、私も自然と笑みがこぼれる。 「私も、悠真のタキシード姿見たいかも」  式場はどこがいいだろうか。やっぱりよく海の見えるチャペル?日本でもいいし、海が綺麗だと評判の海外でもいい。その中に立つ、タキシード姿の悠真はきっとかっこいいはずだ。 「じゃあ、色々な資料集めようか。一生に一度の事なんだし、思い出に残る結婚式にしよう」  だから、と続けて彼はリビングのキャビネットへと向かう。一番上の引き出し。〝それ〟が入っている引き出し。彼はどうやら〝それ〟の存在を忘れてはいなかったらしい。  迷いのない手つきで〝それ〟――二つ折り離婚届を取り出して、彼は広げて私に見せた。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2080人が本棚に入れています
本棚に追加