離婚を考えるまでの――

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「それで?悠真はまた実務経験を積んだ数年後にはアメリカのビジネススクールへ行くのつもりなのだろう?美咲はどうするんだ?」 「一緒について行こうと思ってるよ。《伊ヶ崎》のアメリカ支店があるんだ。福利厚生も良いから、このまま働くのも続けられそうだし、私も続けたいなって」  悠真と話し合って決めたことだ。  《伊ヶ崎》は大きな総合商社。勿論女性も多く働いている。昔は女の人は家の事をするといった事も徐々になくなってきている時代。まだまだ他の会社は意識改革も、社会的な風潮も変わっていない。  けれど、今の義父が悠真のお母さんの事もあってか一気に社内改革に乗り出し、《伊ヶ崎》ではグループ会社を含め、休みが取りやすいような体制をガチガチに固めたという。  私の両親は、円城家でも代々続いてきた政略結婚の理由もあってか、私が働く事に難色は今でも示している。一度固まってしまった価値観というものは、中々変えられない。それは私も社会人になってから、十二分に痛感した。  けれど、悠真が私達の両親達に宣言した言葉で、私は勇気を貰えた。 『俺は美咲の選択を尊重していきたい。  ――それが俺達の夫婦の在り方だから』
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