旦那様と離婚の条件

19/26
前へ
/154ページ
次へ
 自分で言うのもなんだけれど、容姿は普通の方だと思う。特段良くもなく、悪くもなく。麗奈みたいな涼やかな美人に憧れているのだけれど、どうやっても似合わない。 「それなりに努力、してるんだけどなあ……」 「すごく可愛いと思う」と言われ、今日は内心舞い上がった。きっとそう言った相手にとっては、些細な事だったかもしれないけど。  その証拠に手を出された事なんて一回もない。  思ったより長い時間お風呂に入っていたらしい。気になっていたテレビ番組が始まる時間になって、慌てて髪にヘアオイルを塗った。脱衣場を出て、ドライヤーを持ってリビングへと向かう。  タワーマンションの最上階の一室は、かなり広い。  私と悠真しか住んでいないけど、部屋の数が多くて余ってるくらい。二人共働いているので、毎日伊ヶ崎の本家から家政婦さんがお掃除をしに来てくれる。  円城の実家も家政婦さんはいつもいたので、あんまり私は抵抗がない。  埃一つ落ちていない廊下を歩き、リビングに入る。私の夫という地位にいる人は、ラフな部屋着に着替えてソファでタブレットPCを触っていた。  私の気配に気付いて、彼は顔を上げる。お風呂上がりの私の姿を見るなり、緩い笑みを浮かべた。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2077人が本棚に入れています
本棚に追加