旦那様と離婚の条件

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 唐突に告げられた具体的な時間に、私は息を呑んだ。真剣な顔の悠真からは、感情が読み取れない。  今、離婚についてどう思っているのかも。 「よく、考えておいてね」  スルリと彼の長い指先が、私の喉を擽った。普通の手つきじゃなくて、わざと触れるか触れないかギリギリのもの。悠真の存在を意識させるような触り方。  目を細めて、悪戯っぽい笑みを浮かべる彼からは、普段の笑みに混じる少年のような雰囲気は全くない。  いつの間にか、一人の知らない男の人のようだった。  私の反応に満足したのか、あっさりと私から手を引いた悠真は、そのままお風呂場の方へと姿を消す。  完全に彼の姿が見えなくなってから、私は声にならない呻き声を上げた。 「〜〜っ」  なんなの、なんなのあれ?!  大人の男の色気なんて、出されたことなかったのに。  一気に身体中が熱くなる。ソファーに立てた膝に顔を埋めながら、五年前の悠真と自分の発言が脳裏を過ぎった。
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