旦那様と一夜

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旦那様と一夜

 ――「そんなの酒の勢いで一回寝てくればいいだろ?男は単純だから、それですぐ落ちるって」  涼のアドバイスがぐるぐると頭を巡る。どうやって丸の内会社付近から、港区の自宅まで戻ってきたのか思い出せない。もう完全に涼の言葉で頭がいっぱいだった。  手に提げていた細長い紙袋をテーブルに置く。中身を開けると、化粧箱に入った白ワインだった。一緒に入っていたメッセージには、ドイツで飲んで美味しかったから、と書かれている。どうやら、ドイツのお土産らしい。すぐ飲むだろうと、ワインセラーではなく冷蔵庫に入れておく。  まだ悠真は帰ってきていない。送られてきたメッセージには、今日も遅くなるとの事だった。明日はお互い一応休みなのだけれど、遅くまで仕事を頑張っているみたいで、彼の身体がちょっと心配だったり。  ――「まず、俺のワインでもなんでもいい。酒を口実にお互いほろ酔い状態になるだろ?」  広い自宅は一人だと少し寂しい。何も音がないから涼の言葉を思い出してしまうんだ、と思いつつテレビをつけた。時刻はもう既に8時を回っている。カフェでミルクティーを飲んでしまったせいか、あまりお腹は空いていなかった。  悠真は晩御飯を食べたのかな、なんて思いつつ、先程冷蔵庫を覗いた時にあった食材を確かめる。戸棚から市販のクリームシチューのルーを出した。
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