旦那様と一夜

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 ダボッとしたTシャツを着ているので、襟元も詰まっていない。首筋も、ワイシャツを着ている時よりも見える鎖骨も、目に毒だった。  我ながら意識しすぎだと思う。 「何か手伝うことある?」 「あ……、それじゃあ、冷蔵庫に白ワインがあるからワイングラスと一緒に出して」 「了解」  冷蔵庫を覗いた悠真は「旧世界の白ワインだ」と機嫌良さそうにラベルを見る。 「良い感じに冷えてる。白ワインなんていつ買ってたの?」 「今日涼にもらった」 「涼に?そういえば会うって言ってたね。涼は何か言ってた?」  涼に言われた言葉がぶわっと蘇る。一瞬、不自然なまでにガッチガチに固まった。  言えるわけがない。  一回寝てこいって言われたことを。  先程まで勢いに任せて寝る、寝ないなんていうスパイラルに陥っていた事を思い出して、恥ずかしくなった。体温が一気に上がる。 「悠真と中々会えてないって言ってた」  表情があんまりにもぎこちないのは、自分でも分かっていた。悠真にもそれが伝わってしまったみたい。
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