旦那様と一夜

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「まあ、中々予定が合わないのは確かだけど……」  肯定しつつ、探るように私を見つめてくる。彼のダークブラウンの双眸が、私を見透かすように見下ろした。身長差で見上げる形になる。 「なに?涼に告白でもされた?」 「こく……はく……?」  スルリ、と悠真から伸ばされた手が私の頬を撫でていく。「真っ赤だよ」とやけに真剣な声で指摘された。  違う。顔が赤い理由は。 「涼に告白?されてないわ」 「そう?じゃあ、この反応は……なに?」  心配の為に撫でるような手つきでもない。犬猫を愛でるような手つきでもない。  自分の存在を嫌でも認識させるような、そんな触り方。 「こ、これは……、からかわれたのを思い出しただけで……」 「なんて言われたの?」  ぞわりと背中が震える。優しい口調なのに、強制力を感じた。 「そ、そろそろ結婚する人もいる歳だねって……」  嘘はついていない。やや上擦った声になってしまったけれど、結婚の事についても話していた。
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