旦那様と一夜

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 結婚、というワードに悠真は眉を軽く上げ る。 「へえ。なに?涼にプロポーズでもされた?」  悠真に言われて、私はふと冷静になった。  あ、……そういえば涼に「俺と結婚しない?」なんて言われていたんだった。  あんまりにも軽い調子だったのと――、その後の衝撃的なアドバイスの波に流されてしまっていたけれど。というか、彼も冗談半分だった。  急に真顔になった私の反応に、悠真は手を離して頬を引き攣らせる。 「え?本当の事なの?」  今更誤魔化すには、動揺を表に出しすぎていた。諦めて普通の調子で返す。 「からかわれただけよ」  私の止まっていた手の代わりに、サラダを皿に盛り付けた悠真は、そのままテーブルに運んで行った。 「いいんじゃないかな?涼は超優良物件だし」  なんだか一気に距離が離れてしまったようで、慌ててエプロンを外して追いかける。悠真は慣れた手つきで、コルク栓を開けていた。 「涼とは友達だよ」 「……そう思っているのは、意外と自分だけだったりするんじゃない?」
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