旦那様と一夜

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 ご飯は気付いたら食べ終えていて、そこでようやくワインを飲む手が止まった。ワインボトルの中身はもうほぼ底を尽きかけている。 「顔真っ赤だよ?立てる?」 「うん……」  ゆっくりと立ち上がった。自分ではちゃんと立っていたつもりだけど、悠真に「怖いな」と腰を支えられる。 「私、何杯飲んでた?」 「5杯。止めてなかったらワインボトル一本空ける勢いだったよ」  意外と飲んでないな、なんて思ってしまったけど、自分がすっかり下戸だということ忘れていた辺り、酔っ払っていたのだろう。いつもワインは一杯で留めておくのに。  腰を支えられる事もあり、悠真と密着する。彼の愛用している香水の香りが至近距離から漂ってきて、胸が高鳴った。もっと感じていたくて、顔をすり寄せる。 「何?誘惑してるの?」  からかう様な口調でいて、どこか甘さを含んだ声音だった。その声の調子が耳に心地よくて、もっと聞きたい。  ――「ちょっと大胆になってみるんだよ」  涼の言葉が唐突に脳裏によみがえった。同時に少し不安になって、彼のTシャツをちょっと握る。そして胸元に顔を埋めながら、小声で返事をした。 「……うん」
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