旦那様と離婚の条件

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 社員用出入り口で麗奈と別れ、私は腕時計を見た。時刻はまだ六時を少し過ぎた所。予定していた時刻よりまだ時間はある。  高層ビルの建ち並ぶオフィス街、丸の内。  私と同じように終業時間を迎えたらしいサラリーマンやOLが、一斉に駅の方面へと向かっていた。  時々黒い高級車で、後部座席がスモークガラスになっている車が通り過ぎる。きっとどこぞの会社の重役が乗っているのだろう。  待ち合わせ場所は、丸の内の一角の高級レストラン。会社からあまり距離は離れていない。  どこかのカフェにでも入って時間を潰すか……、と思っていると、目の前に黒い高級車が止まった。そう、時々通り過ぎていたスモークガラスの高級車。  運転席から見知った老齢に差し掛かっている人が出てきて、私の姿を認めるなり破顔した。 「奥様。お仕事お疲れ様です。旦那様からお迎えに上がるように仰せつかりました」 「……そうだったの。ありがとう」  会社の誰かに見られる前に、運転手が後部座席のドアを開ける前に、私は素早く車に乗り込む。勿論、しっかり周囲を確認して。
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