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運転手は私の行動に目を丸くしたけれど、再び後部座席のドアを開けた。今度は、私ではない人を乗せるために。
「やあ、美咲。仕事お疲れ様」
「悠真こそ、お仕事お疲れ様」
高級そうなダークネイビーのスーツ。ダークブラウンの切れ長の瞳。高い鼻筋に薄い唇。
十人が十人振り返りそうな美青年――伊ヶ崎悠真が、クシャッと少年のように微笑んで私を見た。
「珍しいね。いつも悠真残業多いのに」
「まあ、今日くらいはね。早めに帰ってもいいかなって。なんせ――特別な日、なんだし」
そう、今日は伊ヶ崎悠真の誕生日であり、
――同時に私達の結婚記念日、だったりする。
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