旦那様と一夜、その後

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 小さい頃から母親の手作りってだけで、クリームシチューが好きだった。だが、母親は親子の嗜好って似るんだねとか感心したように言っていたものだから、あの人はかなり適当で大雑把である。  結局、色々話し合った末に父親に引き取られたのは高校一年生の夏だった。祖父母の家がだいぶ離れていたのと、経済的な問題だった。  ただ、それまでの価値観を一気に崩壊してしまう位、ここは上流階級の人々が揃う場所だった。  父親から紹介されたのは、父親が時々テレビに出ている政治家の息子である京極由弦と、名前を聞いた事のある医療法人を経営する医者の息子である成瀬涼。  最初は隔たりというか、彼らに対しての決して埋められない溝を感じていたけれど、二人共意外とフレンドリーだったし、元々社交性はそれなりにあった俺はすぐに打ち解ける事が出来た。  そして、京極由弦の彼女で榛名帆乃香と仲の良い円城美咲と接点を持てた事には、今では感謝している。  ――幼い見た目をしているな、それが円城美咲の第一印象だった。
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