旦那様と一夜、その後

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 政略結婚なんて俺にとっては、絶対に信じられない事だった。  何より彼女の感情を無視して、彼女の隣に立つ男を想像するのが嫌だった。  考えただけで、胸の中に苦いものが広がる。  今思えば、それは嫉妬の始まりだった。  それだけじゃない。付き合いの長さもあるだろうが、成瀬涼と話す時だけえらくリラックスしている事に気付いた。  二人共友達同士。それなのに重苦しい気持ちが心を占める。  この時から、二人の仲を疑っていたのだろう。  だから、踏み込んでしまった。 「美咲って、涼の事が好きなの?」  唐突だった自覚はある。彼女は目を丸くしてキョトンとした。その反応に思わず気まずくなった。 「あ……、いや、ごめん。答えたくないのならいいよ」 「ううん。大丈夫だよ。私、涼の事、好きでもないし」  首を横に振った彼女にほっと息をつく。でも彼女が続けて言った言葉に、俺は思わず息が詰まった。 「だって私、政略結婚するから、恋愛なんてしないって決めているの」
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