旦那様とデート

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 いがさき……、いがさきって、あの、伊ヶ崎?  やや珍しい苗字。そして、私の狭い世界の中で、円城家の交友関係の中で一つだけ思い当たる苗字。  それは、世間で知らない人の方が少ない有名企業の名前だった。  伊ヶ崎の直系に同世代は居なかったはずだから……、分家なのかな?  直系ならば、私の政略結婚相手の候補になってそうだ。具体的に候補はまだ決まってないけど、両親が目を付けているらしい御曹司がパーティーにいる時は、積極的に挨拶に行きなさいと言われている。その中に彼は居なかったし。  珍しい転入生ということで、クラス中の視線を集めた彼は、涼しい顔のまま自分の席に座る。  第一印象はドライだな、それだけだった。  それから榛名帆乃香と京極由弦を通して仲良くなっても、悠真の事はただの友人としてしか見た事がなかった。  ――あの時までは。 「美咲って、涼の事が好きなの?」  思ってもみなかった事を言われて、私は目を丸くした。対する悠真は真剣な表情なので、からかう素振りはないようだった。だけれど、あまりにもパーソナルな問題だと思ったのか、すぐに気まずい顔に変わる。
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