旦那様とデート

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 まるで自分が彼の特別な存在になった気がした。真に私の未来を案じてくれていて、私が大事だという想いが伝わってきたかのような錯覚すらあった。  彼は私が助けを求めたら、本当に来てくれるのだろうか?  そう思って、まるでおとぎ話の王子様みたいだなあと内心自分の夢見がちな考えを笑い飛ばす。 「ありがとう」  その言葉は自然と口から零れた。  結婚なんてまだまだ先の未来だけれど、彼の気持ちだけで前向きになれた。  私の中で悠真がただの友達から、ほんの少しだけ特別な存在になったんだ。  結婚してから恋に落ちるのは早かった。記念日や誕生日は欠かさずプレゼントをくれたり、出来るだけ会いに来てくれたりする彼の事を好きにならない訳がないだろう。時差の影響で平日はあまり国際電話は頻繁にはしていなかったが、休日はしていたし。  アメリカへと進学したのに、常に彼の存在を身近に感じていたのも大きい。  だって、政略結婚に対する逃げ道を作ってくれたり、義理の両親への子供へのプレッシャーをやんわりと遠ざけてくれたり、普通の社会人として就職させてくれたり。
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