旦那様とデート

9/28
前へ
/154ページ
次へ
 円城家は資産家だ。娘の私ですら、働かなくても良いくらい。本来ならば就職は出来ないんだろうなあと思っていたんだけど、悠真がしたいならいいよと、双方の両親を説得してくれたのだ。きっと一筋縄ではいかなかっただろう。就職したら益々子供が作りにくくなってしまう。早い結婚の意味が無い。  でも率先して私の願いを叶えてくれた。  そして彼のアメリカで優秀な成績を修め、将来へ向かって努力しているその姿に尊敬していた。  そんな人を好きになっていくのは自然だったのだろう。なんせ、恋すらまともにしてこなかった箱入り娘でもあったのだし。 「……好き」  ポロッと口から出た言葉。言った途端に恥ずかしくなって、悠真の頬から手を離した。けれど、その手を掴まれる。 「もっと言って?」  ダークブラウンの瞳がいつの間にか私を捉えていた。 「いつの間に起きて……?!」 「流石にあんなにペタペタ触られたら起きるよ」 「ごめんなさい……」  いーや、といつもよりのんびりとした声で彼は微笑んだ。目元がクシャリと皺を作って優しい雰囲気になる。 「俺は嬉しかったよ」  額にキスをされて、抱き込まれる。直に伝わってくる人肌の温度は心地良かった。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2079人が本棚に入れています
本棚に追加