旦那様とデート

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 結構な額だったけれど、私も彼も社会人一年目だ。港区の高級マンションの最上階にも住んでいるけれど、自分でお金を稼いで初めて、家賃が給与に比べてとんでもなく高いのだと知った。  資産家円城家の人間だし、高級マンションなんて複数所有している。周りの人間も港区のタワマンや青山の方に住んでいたりするので、おかしいとも思わなかった。  悠真はニッコリと微笑んで、「美咲に喜んでもらえて何よりだよ」と私を甘やかすような声で言った。話は自然とお昼をどこで食べるかに移る。 「……あれ?」  ふと前を向いた悠真が何かを見つけたように目を見開く。不思議に思って、私は彼の顔を覗き込んだ。 「どうかしたの?」 「……いや、ちょっと知り合いに似ている人がいたんだ」  休日の表参道。《伊ヶ崎》の規模ならば、知り合いがいてもおかしくない。  悠真は知り合いから逃げるように、近くのイタリアンのレストランに入る。まるで、私達の関係を知られたくないように。コソコソと隠れるように。  不意に涼の言葉を思い出す。
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