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はぁ…
娘に気が付かれないように、小さく息を吐く。
久しぶりに会った娘は、また少し痩せて髪が伸びていた。
大人っぽくなったなあ。
そんな娘は料理が運ばれてきた途端、
皿を空にしてスマホをいじる。
こちらが話しかけても一言も発さない。
早く食べ終えて、早く帰りたいのか。
まぁ、仕方ないか。
しかし、このまま無言だと美味しい料理もまずくなる。
沙羅に構わず話しかけよう。
「この店はな、鈴木に紹介してもらったんだ。鈴木の娘はもう大学生だってよ、沙羅も一度遊んでもらったことがあったよね」
「・・・」
「お父さんは最近、料理に凝っていてね。この煮物美味しいね、自分でも作ってみようかな」
「・・・」
「そうだ、今はどんな絵を書いているんだい?」
「・・・」
一向に目も合わせてくれない娘の顔を見て
切ない気持ちになっていると、
タイミングよく次の料理が運ばれてきた。
和牛の炭火焼。とても美味しそうだ。
沙羅はまた、あっという間にたいらげる。
「このあとはすき焼きをご用意しますね」
店員さんの笑顔が引きつっているように見えた。
そりゃあそうか。こんな親子、不自然だよなあ。
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