憂鬱な家路

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憂鬱な家路

離婚の原因は、父が仕事人間だったから。 毎日深夜に帰ってきて、早朝に出勤する。 土日も父はゴルフだなんだと言って家を出る。 家にいても、自室で仕事をしているから遊んでもらった記憶は ほとんどない。 その代わり、まるで罪滅ぼしのように やたらいろんなものを買い与えてくれた記憶だけある。 いつかのなんでもない日、父が突然画材セットを買ってきた。 もともとお絵かきが好きだった沙羅は 新品の画材セットに目を輝かせた。 絵を本格的にやり始めたのもそのときから。 そんな父親のせいで母は家事・育児を一手に負担し、 だんだん体を壊していった。 やがて母は限界に達する。 離婚して沙羅と二人、母の実家のある街へ引っ越すことになった。 そんな過去を思い出しながら、 家路についた沙羅はまた深いため息をつく。 「行きたくないな…」 前回会ったときも、やたら高級な店で肩身が狭かったし これでご機嫌取ろうとしているのが見え透いてすごく不快だった。 何を話したかなんて覚えてない。 父からのメッセージは、既読だけつけて放置した。
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