当日

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暗い美術室に入り、電気はつけず そのまま膝を抱えて床に座り込む。 すぅーっ はぁーっ 油絵の具の匂いを吸い込んだら、 ぷちっと何かが切れて とめどなく涙が溢れてきた。 なに、今の。 上げて落とされるとはこのことか。 一瞬でも期待した私がバカだった。 下から女の声が聞こえてから、 賢治は私の顔なんて見やしなかった。 見せつけられた感。 心底、相手の女が恨めしかった。 悔しいやら、悲しいやら、情けないやらで 涙は止まることを知らない。 嗚咽をあげながら、沙羅はひとしきり泣いた。 さっきは強がって我慢していたぶんも、 決壊したかのように溢れてきた。
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