シナプスが僕を作る?

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 この問題が大きくなり、悩んだ挙句国立病院の主治医に相談を持ち掛けた。だが返って来た答えは最悪な物で、それは僕の中に居た全ての存在を否定する物だった。その否定は大きな打撃で有り、斉藤茜と言う一人の人物その物自体を否定された様に感じたのだろう。前にも言った、新しく存在を作っていた誰かは、多分僕だったのだと思う。(未だはっきりとは分からないが)その僕が否定された時、幼少期に否定され続けた事と被り、大きなショックを受けたのだろう。その後僕の中に居た全ての存在は、一人残らず消えてしまった。 「僕」と言う存在が残ったのも、ここからだ。そしてここからが、更なる大きな問題の始まりと、悩みの始まりでも有る。  一番の問題でも有り、悩みでも有る事は、以前は当たり前の様に出来ていた事が、出来なくなってしまった事だ。それは仕事で有り、人間関係で有る。 前にも言ったが、普段はその場に適合した存在が、仕事ならば職場へ、何かの集まりならば、その集い場へと出向いていた。そうする事で、上手く社会生活を送っていたと言う事でもある。だがそれら全ての存在が消えた今、同等に行う事が出来ないのだ。問題はそれだけではない。感覚や気分等の内面的要素も、変化をした。  全ての存在が消えてからの数週間は、実の所余り記憶が無いのだ。気付いた時には「僕」と言う存在が居り、何故ODをして腕を切り裂いていたのかも、よく分からなかった。只「居る」と言う事だけは理解出来たが、「誰」と言う事が理解出来なかったのだ。だからと言って、全ての記憶が無い訳ではない。断片的に残っているし、時間と共に徐々にと思い出して来た事も有る。只数人の同居人が居る時に書いた日記については、余り覚えてはいない。  ネット内での自分の役割については、覚えていた。確立されたキャラが作られているからだろう。同じく以前にも会った事の有る人物については、問題無く対応が出来た。これも又、確立されたキャラを覚えていたお陰だと思う。「演じる」と言う事自体は出来たのだ。だが全くの新規となれば、話しは別だ。どう接すればいいのかが、全く分からないのだ。初歩的なコミュニケーション方と言う物が、欠落していた。  逆に不思議な事に、以前は全く覚えていなかった昔の事や、思い出せなかった記憶が、はっきりと思い出せる様になったのだ。思い出すと言っても、思い出話として出来る、動いている昔の自分の姿を覚えているのは、余り良い思い出ではないが。残りはアルバムの写真を見て、覚えている程度だ。それでも複数の存在が居る以前の自分(大体二十代前後からの数年だろう)は、特に子供の頃の記憶と言う物を、全く覚えていなかった。思い出したくなかったと言う方が、正しいのかもしれないが。それが今では、子供の頃の記憶も一部だが、思い出す事が出来る。長年蓋を閉め続けていた記憶の扉が、自然と開いたと言った感じだ。
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