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「いや、その彼女が言ってたじゃないか。
お前、俺を置いて、駄菓子屋に行ってたって」
「だから、置いてってない。
帰る方向が違ったんだろ」
と言いながら考える。
あのとき、こいつがいたら、こいつの方が余計なこと言って、店長になってたかもな、と。
まあ、そしたら、壱花と並んで店にいるのは、こいつだったかもしれないわけだが――。
「まだあるのか? その駄菓子屋。
今度連れてけよ」
俺だけ行ったことないの、悔しいから、と斑目は言う。
「……あるが、疲れてるやつしか入店できない」
「なんだ、その入店基準。
くたびれたスーツがドレスコードとか?」
とちょっと笑って斑目が訊いてくるので、
「そうだ。
受付嬢とチャラチャラしてないで疲れてこい。
話はそれからだ」
と言って、倫太郎は、さっさと玄関ロビーを出て行った。
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