私たち、なにか忘れてやしませんか……?

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「いらっしゃいませ」  その日、壱花はひとりで店内の商品をチェックし、片付けていた。  すると、倫太郎が斑目(まだらめ)を連れて現れる。 「疲れてきたぞ」 と言いながら、斑目は店に入ってきた。 「意外に素直ですね……」 と壱花は呟く。  斑目はそんな壱花を見て言ってきた。 「あんた、此処の店員でもあったのか。  おばあちゃんちを手伝ってるとかか」  いやいや。  私にあんな肝の据わった妖怪みたいなおばあちゃんはいませんが……とこの駄菓子屋のオーナーを思い浮かべて思ったあとで、  ああ、妖怪だったか、と再確認する。 「疲れようと思って、職場でエレベーターを使わずに階段を上がったり下りたりして大変だった」 と言う斑目に、 「いや、仕事で疲れろ」 と斑目の上司の心の内を代弁するように倫太郎が言う。
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