私たち、なにか忘れてやしませんか……?

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 なんだろう? と音の源を探すと、壱花がカウンターの奥へと入っていった。  その手に小さな赤い箱を持っている。  いつぞやの花札だ。 「なにかこれがカタカタ揺れてたような……」 と呟く壱花の手から斑目が、ひょいとそれを取り上げる。 「『百鬼夜行花札』?  なんだこれ」 と横に小さく書かれた文字を読む。  そのとき、花札が斑目の手からこぼれ落ちた。  床に叩きつけられ、散らばった花札を壱花がしゃがんで取る。 「あれ?  この花札、予備の札が多くないですか?」  真っ白、というか変色して黄色くなっている札が何枚かある。
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