私たち、なにか忘れてやしませんか……?

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「ああっ。  いつもあずき買いに来てくれるおじいさんっ」  あのおじいさんが大雨の中、あずきを洗っていた。 「……これは大変なことだな。  お得意様が吸い込まれるとは」 と倫太郎が呟く。  いや……、高尾さんは? 「まだ予備の札があるが」 と言いながら、斑目が白い札を見ていると、どれ、とキヨ花が横から一枚取った。  すると、キヨ花の姿が消える。  ええっ!? とみんなが見たとき、ぱたりと床に一枚の札が落ちた。  その札の中、(あで)やかな蝶の柄の着物を着た女狐が牡丹の前で、妖艶に微笑んでいる。 「キ、キヨ花さん……」
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