私たち、なにか忘れてやしませんか……?

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「人間は手にしても吸い込まれないんだな」 と倫太郎が言い、 「百鬼夜行花札だから、札になれるのはあやかしだけなのでは」 と冨樫が言ったとき、 「やあ、どうしたんだい?  今日は人数多いじゃないか。  おや、斑目くんまで」 と声がした。  シュッとしたグレーのスーツ姿。  倫太郎のお目付役、浪岡常務だ。  孫のために駄菓子を買いに来たらしい。  内田建設の会長の孫である斑目とは面識があるようだった。 「なんだね? それは。  花札かね。  いやあ、私はこう見えて、花札は強くてね」 と言いながら、浪岡は斑目の手から白い札を一枚とった。  すると、浪岡が消え、ぱたり、とみんなの真ん中に札が落ちる。
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