私たち、なにか忘れてやしませんか……?

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「浪岡常務ーっ」 と壱花と冨樫は叫んでいた。  落ちた札の中。  赤い空に浮かぶ白い満月の前で、浪岡常務がいつものように微笑んでいる。 「何故……」 「あやかししか吸い込まれないはずなのに」 と壱花と冨樫は呟いたが。  倫太郎は、 「小うるさい古狸だからだろう。  札があやかしだと勘違いしたんじゃないか?  月も出てるし。  腹鼓を打つのに、ちょうどいいだろう」 といつも自分をやり込めるお目付役が封じられた札を見ながら楽しそうだ。  もしや、このまま出てこない方がいいとか思ってるんじゃないだろうな……。  壱花は、そんな倫太郎を苦笑いしながら眺めていた。
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