私たち、なにか忘れてやしませんか……?

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「あ、そうだ。  絵とか描いたらどうですか?」 と壱花は言ってみた。 「あやかしの絵を描いて、とりあえず、札にするんです」  壱花はカウンターの上に札を一枚置くと、近くにあったペンをとり、絵を描きはじめる。  後ろから覗き込んでくる斑目に、近い近い近いっ、と思いながらも、壱花が描き終わると、斑目が深く頷き、 「ほう。  すごい才能だな。  こんな見たこともない生き物を即座に描けるとは」 と褒めてくれた。 「……猫です」  化け猫もあやかしだから、とりあえず、猫の絵を描けばいいかと思ったのだが……。 「よし、俺も描こう」 と倫太郎が残りの白い札に触れようとしたので、壱花と冨樫は思わず止めていた。
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