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「お疲れ。
今日は酒と花札持ってきてやったぞ。
一杯呑みながらやろう」
数日後。
開店してしばらくした頃、そう言いながら、斑目がやってきた。
「いやあ、此処に来るのに疲れなければと思って、一升瓶片手に走ってたら、通りすがりのサラリーマンたちに奇異な目で見られたぞ」
と言う斑目に、倫太郎が、
「仕事で疲れてこい」
と言う。
花札はやらんぞ、と倫太郎は言ったが、斑目が人の話なんぞ聞くわけもないので、台所からかき集めてきたバラバラのグラスで一杯やりながら、花札がはじまった。
「この間のケリがついてなかったからな」
と言う斑目に、倫太郎が、
「じゃあ、まだしゃべってないのか」
と確認する。
「しゃべるわけないだろう。
もしかしたら、壱花は斑目壱花になりたくて俺と結婚するかもしれないからな。
自分の花嫁のおかしな噂を流す男がいるか」
何故、名前目当てに結婚……と思いながら、壱花は手札を見る。
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