1.間違い電話

4/5
前へ
/99ページ
次へ
 昨日までの私はいつ和希とのデートが入っても良いように特に予定もたてていなかった。それ故、立派なごろ寝休暇になりそうだ。  休暇の初日は泣いて寝て、泣いて寝てを繰り返し、気付けば夜になっていた。今日はほとんど何も食べていない。空腹なのかすら分からない。  ーーん?  突然、枕元のスマホが鳴った。  のろのろとした動作でディスプレイを確認し、十一桁の番号を見つめた。下四桁が0620で終わる知らない番号だ。  私の記憶が正しければ、今し方五分前にも掛かってきた間違い電話のはず。  一瞬無視をしようかと思ったけれど、きっと電話の相手はまだ佐藤さんと連絡が取れていなくて、このまま放置すると何度でも掛かってくると思われた。  それは流石に迷惑だ。 「……はい」  さっきと同じ口調で電話に出た。 『……あ。佐藤さんの携帯電話でしょうか?』  向こうは一度間違っているからか、さっきより丁寧な物言いだった。 「すみません、佐藤さんでは無いです」 『え……、あれ?』  男性は困ったように独りごちた。 『佐藤さんで登録した番号に掛けてるのにおかしいな……』 「はぁ」
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

619人が本棚に入れています
本棚に追加