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「おーい、翔馬~!今日は付き合えよ~!」 校舎を出た瞬間、呼び止められた。 振り向かなくても、それが誰の声かなんて分かっている。 「あのなぁ、渉流(わたる)。俺はこれから部活なんだよ。毎回同じコト言わせんな」 「少しぐらいサボったって良いだろ?偶には付き合えよ」 「バカ言ってんじゃねぇよ。サボって良い訳ねぇだろが」 「お前、俺と野球とどっちが大切なワケ?」 「野球」 「即答かよっ。ヒドイわ~、村上君ったら!」 「気持ち悪いんだよ。じゃあな、渉流」 不満気に膨れる頬を抓り、俺を睨む細い目を覗かせる前髪を撫でて部室へと駆け出した。 練習着に着替えグラウンドへ走って向かう途中、バイクで走り去る渉流の姿が視界を掠める。 ヘルメットを被っていない所為で、陽の光を浴びた金髪が風に靡く。 どんどん小さくなるその姿が、何だか寂し気に見えた… 渉流と知り合ったのは高校に入学して直ぐだった。 上級生に、背が高くて帰国子女だと言うだけで生意気だと、因縁を付けられた俺と その時に既に金髪で常に周囲を睨みつける態度が生意気だと、呼び出された渉流と 2人してヤキを入れられながら必死に抵抗した。 「……くっそぉ…痛えな……なあ…アンタ、名前なんて言うの?」 「……」 「…俺、村上翔馬。皆はショウって呼ぶけどな」 「……雨宮渉流…」 「アマミヤワタル、ね…ワタルって呼んで良い?」 「……好きに呼べば…」 こうして、俺の高校最初の友人ができた。
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