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――速水光さん。速水ヒカルさーん起きてくださーい。ご購入された「夢色ジュース」をお届けに参りました。サインお願いしまーす。
何処からか子供のような男か女なのか判別がつかない声音の声が聴こえた。だけど、光は眠くて、眠くて目を開ける事が出来なかった。だが。
――サインくださーい。まだ、貴方の他にも配達する仕事が残ってるんです。お願いですから起きてくださーいっ。
「ん……後、五分。五分だけ」
耳元で話し掛けられる行為に出られて光は相手に待ってと声を掛ける。そうすれば見知らぬ子供の高い声は止まり。
「五分だけですから。それ以上は待ちません。此方もバレたら上からお仕置きを受けますから……」
少し拗ねたような声音が聴こえた。
光は遠くにある意識の中で子供の声を聴いた。だが、「お仕置き」などの不穏な響きを感じる言葉を聴いて流石に目を覚ました。
「あーもうっ……」
パチッと目を開けた光は顔を伏せた自分より幼い子供を捉える。大きめの帽子で顔は見えない、元々白のパーカーであろう大きめの衣服は、絵の具、クレヨンか分からない色で所々汚れてあった。そして、子供を見つめていれば自分が地に付ける地面の違和感に気が付いた。
「……白い星の砂?」
その呟いた声で顔を伏せていた幼い子が顔を上げる。
パチッとした大きな目。ふくっくらとした柔らかそうなほっぺ、そして起きてくれたことが嬉しいのか頬を赤く少し染めて笑顔を向ける可愛い表情。
「あ、お姉さんこんばんわ。はい、ご注文された「夢色ドリンク」です。此方にサインください!」
性別は髪が短い為に分かりはしないが小さな手でサイン用紙を此方に渡して来る光景をみていれば何だかどうでもよくなる。光はサイン紙を受け取り、何でサインしようと思っていれば……。
「はい。コレ使ってください」
星の飾りがついたペンを一つ渡される。
「……ありがとう。んーと」
サインと書かれた場所に適当に名を記入した光は子供に手渡す。それを受け取った子供は地面に置かれていたラッピングされ綺麗に包装された箱を両手で手渡して来る。それを受け取る光は……。
まぁ夢だし変な事はないよね? などを口に出さずに思った。
「ありがとうございます。では良い夢を……」
子供は荷物の受け渡しは終わったとばかりに自分の元から去って元々小さな体を真似粒サイズへと変えて離れる。その光景を見ながら手元にあるペンを返し忘れている事を思い出す。だが、ふらっとした感覚に襲われてしまい声に出す事も出来ずに意識を落とす。
「――っ」
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