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最終話
「……う、ん」
パチパチと光は白い天井の部屋で目覚める。
顔を横に向ければ腕には点滴でも繋がっているのか線が目に映り、自分の眠っているベットの上では母が顔を伏せて眠り、父は離れた位置で椅子に座りながら眠っていた。
そんな光景を見ながら痛む体に顔を歪めて起き上がる。腕に力を入れた時に鋭い痛みが体に走るが光は構わず起こす。
「うわ。体中包帯だらけ……こんなのテレビの中だけだと思ってたけど自分も体験する事になるとは」
腕などに巻かれた包帯を見つめて光は朝なのか、昼なのか日光が入って来る窓の方へと顔を向けて。
「夢ではないんだよね……」
思い出したくない悲惨な光景。毎日の退屈で楽しい日常が一瞬で壊れる真っ赤に染まった世界。体がガタガタを震えだす。
「こわかった」
光は顔色悪くして呟いた。
その言葉が聴こえたのか、身を動かしたから母がごそっと動いて顔を上げる。目が赤い母と光の目が合う。そして、バッと母が目を見開いて光へと抱き着いた。ギューッと強い力で抱きしめる為に一瞬放心していた光は痛みで。
「ちょ、痛い。いたい。私怪我してるから!!」
「お、おい。お前、光が痛がってる」
「あ、あぁごめんなさい。あ、看護師さん。看護師さんを呼んでこないとッ」
母の声で目が覚めたのか父が母を引きはがしてくれる。それにホッとしながら出て行った母とは変わり、父と向き合って。
「た、ただいま。お父さん」
「……おかえり。本当に良かった。他の子のように目が覚めなかったらどうしようかと私は心配でならなかった」
「あ……」
「光のクラスメイトの数名は未だに目覚めていない。何名かは目覚めたんだが……どうにも記憶がないならしい」
父が語る言葉を聞いて光は暗い影を落とす。
そして、改めてアレは現実に起こり自分達を殺そうとしたのだと思い知らされた。
「そっか」
光は、そう呟いて。
バタバタと此方に掛けて来る母であろう音の方へと顔を向けた。
その後は忙しかった。光は看護師や医者などに色々と質問や体の検査など多くの事を行い、いくらか治癒した頃には警察の人が訪ねて来て情報提供と言う形で質問を受けた。そんな生活が一か月、二か月と続いて退院できることになった。学校は体調が本調子ではない事もあり、家でいるが。
「……あの怪物は一体何処に消えたんだろう」
そして、私が購入した謎のドリンク。
家に帰り、鞄の中を確かめてみれば破れた包装用紙だけだったのだ。母や父に聞いても知らないと言う。
「何処からが夢だったのかな……」
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