想定外。その1.

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想定外。その1.

 その夜、おかしな事が起った。 いつも通りに強制給餌をする。 その時、口に当てたチューブに何かがトロリと落ちた。          ##  「え?」 手を止める。 始めは何が起きたのか、理解できない。 生暖かい物が私の手を伝う。 「ええ?」 慌ててチューブを抜いた。 そしてそしてシリンジを見つめた。 手を伝う物の、正体が分かったから。 「アモ・・・!」 落ちたのはシリンジの中身。 アモの体を突き破り、流れ落ちたのだ!  私は『そのう』付近の羽を、かき分けた。 餌が粘着(ねばりつ)き、(さら)(あふ)れ出ている。 そのうに、穴が開いている‼ 「どうしたんだ?」と主人。 「アモ・・・・アモ・・・!」 「何が、あった!」 駆け寄ろうとする主人に「水を持って来て!」と叫んだ。 確かめるまでも無かった。 やはり水が飛び出した。 時間は夜。 もう診察時間は過ぎている。 私はアモを抱えた。 泣きじゃくる私に主人はピンときた。 「夜間救急を呼ぶぞ!」  待てない・・・もう待てない。 もう・・・あんな想いをするのは嫌。 アモは本当にいい子なのに。 ・・・神様・・・・           ##  夜間救急の先生が来て、皮下注射をした。 太い針がアモに刺さる。 鳥は犬、猫のように、点滴が打てない。 体が小さいからだ。 でも、アモが痛そうで、たまらない。 それ以上に、アモが心配でたまらない。 先生はアモの体を調べた。 そして応急処置をした。 「いつからですか?」 「この、そのうは何ですか!」 ハッとした。 「1週間前、熱々の餌を、強制給仕して・・」 「それだ!」と先生。  「大変、申し上げにくいのですが・・・」 先生が私をかえりみる。 そしてアモを見つめた。 「そのうが・・・損傷し・・そこから・・」 「壊死(えし)が始まっています。」 「そのうの火傷が、すぐ出る場合とじわじわくる場合があり、 この場合は後のケースですが。かなり・・・危険な状態です。 やがて、そのうに穴が開くと思われます。」 「このままでは・・この子は・・」 先生は私達夫婦を見つめた。 「この子が、生きられる可能性は低いです。」           ##  断言された。 「私は夜間救急なので、ここまでしか出来ません。 明日、主治医にご相談なさってください」
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