18人が本棚に入れています
本棚に追加
想定外。その1.
その夜、おかしな事が起った。
いつも通りに強制給餌をする。
その時、口に当てたチューブに何かがトロリと落ちた。
##
「え?」
手を止める。
始めは何が起きたのか、理解できない。
生暖かい物が私の手を伝う。
「ええ?」
慌ててチューブを抜いた。
そしてそしてシリンジを見つめた。
手を伝う物の、正体が分かったから。
「アモ・・・!」
落ちたのはシリンジの中身。
アモの体を突き破り、流れ落ちたのだ!
私は『そのう』付近の羽を、かき分けた。
餌が粘着き、更に漏れ出ている。
そのうに、穴が開いている‼
「どうしたんだ?」と主人。
「アモ・・・・アモ・・・!」
「何が、あった!」
駆け寄ろうとする主人に「水を持って来て!」と叫んだ。
確かめるまでも無かった。
やはり水が飛び出した。
時間は夜。
もう診察時間は過ぎている。
私はアモを抱えた。
泣きじゃくる私に主人はピンときた。
「夜間救急を呼ぶぞ!」
待てない・・・もう待てない。
もう・・・あんな想いをするのは嫌。
アモは本当にいい子なのに。
・・・神様・・・・
##
夜間救急の先生が来て、皮下注射をした。
太い針がアモに刺さる。
鳥は犬、猫のように、点滴が打てない。
体が小さいからだ。
でも、アモが痛そうで、たまらない。
それ以上に、アモが心配でたまらない。
先生はアモの体を調べた。
そして応急処置をした。
「いつからですか?」
「この、そのうは何ですか!」
ハッとした。
「1週間前、熱々の餌を、強制給仕して・・」
「それだ!」と先生。
「大変、申し上げにくいのですが・・・」
先生が私をかえりみる。
そしてアモを見つめた。
「そのうが・・・損傷し・・そこから・・」
「壊死が始まっています。」
「そのうの火傷が、すぐ出る場合とじわじわくる場合があり、
この場合は後のケースですが。かなり・・・危険な状態です。
やがて、そのうに穴が開くと思われます。」
「このままでは・・この子は・・」
先生は私達夫婦を見つめた。
「この子が、生きられる可能性は低いです。」
##
断言された。
「私は夜間救急なので、ここまでしか出来ません。
明日、主治医にご相談なさってください」
最初のコメントを投稿しよう!