誤診。

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誤診。

主治医の獣医は言った。 「これはもう、手遅れですね。」 え? 今、何て? 頭を金づちで、叩かれた様に体に衝撃が走る。 「そのうが、壊死しかけている。 手遅れと言ったんです。そのうちに穴が開くでしょう、 もう私の、手には負えません」 体が震えた。 どこか遠くから、主治医の声が届いた気がした。 主人が背後から、押さえないと 私は椅子から、転げ落ちただろう。 背越しに、主人が歯ぎしりする。 「1週間前、貴方は大丈夫だと?」 「状況が変わったんです。抗生剤や炎症を押さえる薬を とにかく、出します。ミネラル、ビタミン剤も用意して!」 声に背後の看護師が、薬の用意に走る。 私は動けない。 何か感じたのか、うずくまるアモが、ヒョコヒョコと首を動かす。 「ここ2・3日が、山ですね。薬は3・4日分は出しますがね… もう後は自然治癒(しぜんちゆ)を待つしかない。」 「おい、次の患畜(かんちく)を入れて」 アモを付き出し渡される、診察室から追い出されかけた。 「何かして下さい!何か」 反射的に叫んだ時、医師が言う。 「私に出来る事はもう、ありません。せめて最後はご自宅で…」 他の方が私達に気を使いながら、犬を連れ入り鍵が閉まる音がした。 アモ・・・あも.... 腕の中で私を気にするアモ。 主人がペットキャリーにアモを戻し、会計を済ませる。 山積みの薬を(カバン)に入れる。          ♯♯ アモは大丈夫と言ったじゃない。 何故?たった1週間よ。 薬も、何も出されなかった。 大丈夫と言ったのに。 1週間で、手遅れ??? 分からない、分からない。       ♯♯ キャリーをかき抱いた。 泣くしか、出来ない。 主人も、黙っている。かける言葉が無いのよ。 主人も、きっと途方にくれている。       ♯♯   大丈夫と言うから、後ろ髪を引かれつつ、母の通院に同行した。 車椅子であちこち悪い母を、バスと電車を乗り継ぎ、送迎した。 胸の毛引きが収まり安定し見え、ワンちゃんズのトリミングに行った。 アモが気になり、ろくにブラッシング出来なかった3女のマリーは、 コッカースパニエルなのに、変なカットにされた。 「まるでラブラドール!」 そういって、夫婦で笑った。 それを、もう手遅れ? 私はツィードした。 【明らかに、誤診!】と。
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