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新しい病院へ。
そこは、少し遠い病院。
「えーと、電車とバスを乗り継いで・・・」
スマホの地図を開き、メモした住所と、
にらめっこする私に主人が言った。
「車で行くぞ!その方が早い」
「え?でも、今日は平日じゃ…」
「休みにした!」
はぁ?と思わず返す。
「遠縁の大叔父が、死んだ事にした」
「だって…もう、亡くなっているわ」
「この際だから、生き返って。もう1度、死んでもらう」
##
主人の言葉に、大はしゃぎでアモをペットキャリーに入れた。
荷物を持ち、玄関に出る時にワンちゃんズが騒ぐ。
アンとアリスが足元でうろうろ。部屋のワンちゃんも騒いでいる。
私は「アモと病院に行くの。留守番しててね」と言った。
アンは賢い。分かったのか、アリスを連れ部屋に戻る。
犬語で仲間に何か言ったのか、みんな騒がなくなった。
ダイニングのドアを閉める時、クーちゃんと目が合った。
カシャカシャとケージ内から、鳴らしている。
「クーちゃんもお願いね」
うんうんうんとクーちゃんが首を振った。
クーちゃんはアモをペットキャリーに入れた時から、
察しているらしい。
クーちゃんも病院へ行く時に使う大キャリーバック。
主人はすでにアイドリングで待っている。
「遅い。朝1番のつもりなのに」
助手席にキャリーを抱いて座り、シートベルトをした。
アクセルが踏まれ、車が走り出す。
主人はすでに目的地をカーナビに入力している。
アモのキャリーを見た。
バックの一部がプラスチック製で中が見える。
止まり木もついている。インコ用のキャリーバッグだ。
アモは止まり木に居ない。
底から私を覗く。
ぐったりしてるかと思ってたら、ひょこひょこと首を動かす。
##
病院は犬猫、鳥も診る病院。
事前に電話しようとしたが、繋がらない。
昨夜は、時間が遅すぎた。
(診察前だからかな?)
少しでもアモの状態を知らせておきたい。
何度目かの呼び出し。
やっとつながった。
私は名乗ると、アモの状態を説明した。
『そのうに穴が開いているんです、まだ雛です』
『体重は?』
伝えようとしたとき電波が乱れた。
横の主人は「高速へ入るぞ」と伝える。
途切れたり繋がったりしながら「高速道路に入ります」と
なんとか伝えられた。
「しっかり捕まってろ。飛ばすぞ」
高速で主人はいきなりスピードを上げた。
安全運転の主人が、猛スピードに近い。
それだけ主人も感じているのだ。
1分1秒でも早くと。
私はアモのキャリーを抱え込んだ。
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