新しい病院へ。

1/1
前へ
/30ページ
次へ

新しい病院へ。

 そこは、少し遠い病院。 「えーと、電車とバスを乗り継いで・・・」 スマホの地図を開き、メモした住所と、 にらめっこする私に主人が言った。 「車で行くぞ!その方が早い」 「え?でも、今日は平日じゃ…」 「休みにした!」 はぁ?と思わず返す。 「遠縁の大叔父が、死んだ事にした」 「だって…もう、亡くなっているわ」 「この際だから、生き返って。もう1度、死んでもらう」           ##  主人の言葉に、大はしゃぎでアモをペットキャリーに入れた。 荷物を持ち、玄関に出る時にワンちゃんズが騒ぐ。 アンとアリスが足元でうろうろ。部屋のワンちゃんも騒いでいる。 私は「アモと病院に行くの。留守番しててね」と言った。 アンは賢い。分かったのか、アリスを連れ部屋に戻る。 犬語で仲間に何か言ったのか、みんな騒がなくなった。 ダイニングのドアを閉める時、クーちゃんと目が合った。 カシャカシャとケージ内から、鳴らしている。 「クーちゃんもお願いね」 うんうんうんとクーちゃんが首を振った。 クーちゃんはアモをペットキャリーに入れた時から、 察しているらしい。 クーちゃんも病院へ行く時に使う大キャリーバック。 主人はすでにアイドリングで待っている。 「遅い。朝1番のつもりなのに」 助手席にキャリーを抱いて座り、シートベルトをした。 アクセルが踏まれ、車が走り出す。 主人はすでに目的地をカーナビに入力している。 アモのキャリーを見た。 バックの一部がプラスチック製で中が見える。 止まり木もついている。インコ用のキャリーバッグだ。 アモは止まり木に居ない。 底から私を覗く。 ぐったりしてるかと思ってたら、ひょこひょこと首を動かす。            ##  病院は犬猫、鳥も診る病院。 事前に電話しようとしたが、繋がらない。 昨夜は、時間が遅すぎた。 (診察前だからかな?) 少しでもアモの状態を知らせておきたい。 何度目かの呼び出し。 やっとつながった。 私は名乗ると、アモの状態を説明した。 『そのうに穴が開いているんです、まだ雛です』 『体重は?』 伝えようとしたとき電波が乱れた。 横の主人は「高速へ入るぞ」と伝える。 途切れたり繋がったりしながら「高速道路に入ります」と なんとか伝えられた。 「しっかり捕まってろ。飛ばすぞ」 高速で主人はいきなりスピードを上げた。 安全運転の主人が、猛スピードに近い。 それだけ主人も感じているのだ。 1分1秒でも早くと。 私はアモのキャリーを抱え込んだ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加