事故。

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事故。

気づいたのは。 餌を3分の一、入れたところ。 アムの異変に私は固まった。 苦しそうなアム。何か変だ! 強制給餌のチューブを触った。 熱い!高熱だ。 「どうやって温めたの⁉」 「え?ストーブで…」 「馬鹿!!!!」  私の叫びに主人は(あわ)てて水を()みに行き、私は シリンジのチューブを抜いた。 「水を飲ませろ、早く!」 「冷やすんだ」 私は、パニックになっていた。 「アモ・・・・あも・・・」 主人はスペアのシリンジに水を入れた。 「早く・・!!」          ##  私は震える手で受け取り、アモに水を飲ませた。 強制給餌は主人は、不慣れなのだ。 私じゃないと、出来ない。 主人の動きは速かった。 うろたえ、震える私の横で素早くアモをタオルに包む。 「病院、空いてるよな⁉」 「診査時間…終わって…」 「畜生!」 大声にびくんと体が跳ねた。 主人は声を荒げる人じゃない。 「ごめん、お前に言ってない。 ……朝まで…待つしかないのか?」 その声に体が振るえた。 泣くしか、出来ない。 朝はまだ? 長いよ……長い。 「ごめんよ、アモ・・・ごめんよ・・・・あも・・・」 主人のささやきが聞こえる。 私は体の震えを止められなかった。 あんな高熱を、飲ませた自分を責めた。 主人も自分を責めている。 「アモ・・・・あも・・・アモ・・・・あも・・・」 本当は主人を、怒鳴りつけてやりたい。 でも確かめなかったのは、私。 「アモ・・・・あも・・・」 (ほお)を涙が伝う。        ♯♯  翌日、朝1番で。 そう思っても、脚が立たない。 シンクにしがみつき、夜通し…泣く。朝なのに心がすり減り消耗 しきり、泣くのを止められない。 主人が私の代わりに病院へ向かう。 私はアモのママなのに。 ママなのに。なんて、情けないのか? パパは私とは違う。 死なせない!と叫び、必死だ。 祈るような気持ちで、アモを抱き病院に飛び込んだ。
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