中編

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中編

     しばらくして。 「はあ……。はあ……」  一仕事終わった、という雰囲気で荒い息を吐きながら、男は体を起こした。女の上から降りて、彼女の隣で、ゴロンと横になる。  女は女で、満足そうな顔で荒く呼吸していたのだが、 「キャッ!」  突然の刺激に、小さな悲鳴を上げてしまった。いつのまにか、また男が、彼女の左乳首を吸っているのだ。 「やめてよね、今は。少し休ませて」  そう言いながら、軽く彼の頭を叩く。『叩く』というより『撫でる』と言った方がいいかもしれない程度に。 「いいじゃないか。ただの後戯だ」  男は女の乳首を舐めながら、モゴモゴと返した。  女は少し眉間にしわを寄せて、抗議を続ける。 「後戯って……。あなた、前戯でも左胸ばかり、それも乳首ばっかり……」 「それだけチカの乳首が魅力的ってことさ。特に左は凄いぜ。ほら、いったんは落ち着いたはずなのに、もうまたビンビンだ。この勃起乳首、見ているだけでも興奮するからなあ。舐めたらもっと興奮で、一度口に入れたら『やめられない止まらない』って感じだぜ!」  論より証拠と言わんばかりに、男は女の左乳首に、チューチューと吸い付く。  女としても、くすぐったいを通り越して、明らかに快感なのだが……。理性的な頭では、これ以上はキリがない、と思う。何よりも、守らなけばならないものがあるのだ。 「ホントにやめてよね。私の乳首が魅力的なら、ちゃんと右も可愛がってあげて。あなたのせいで、左の乳首、右よりも黒ずんで来てるのよ!」 「そうかあ? 別に気にするほどじゃないと思うんだが……」  いったん乳首を口から離して、男は左右を見比べた。  言われてみれば、左乳首は少し黒ずんでおり、それに比べて右乳首は薄桃色。だが、それほど大きな差ではなく「言われてみれば」「比べてみれば」という程度に過ぎない。  むしろ彼の頭の中では、彼女の乳首の色は、もっと黒いイメージだった。その『イメージ』と比較したら、十分にピンクではないか。  とはいえ今は、それらを正直に言うべき場面ではないのだろう。 「大丈夫だよ、チカ。右も左も、きれいなピンク色だ」 「それは私の努力の結果なの!」 「……努力?」 「左乳首の黒ずみを取り除くために、美白クリーム使ってるんだから!」  そこまで説明する気はなかったのに、と思いつつ。  女は、恥ずかしい告白をするのだった。    
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