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前編
「……あんっ」
生まれたままの姿でベッドに横たわる女が、ピクンと体を反らせると同時に、甘い声を上げた。
ほんの一瞬、自分自身のコントロールを失った、という感じだ。だが彼女は、すぐに冷静さを取り戻して、自分に覆い被さる男へ声をかけた。
「ねえ、お願いだから。あんまり左ばっかり攻めないで」
女の言葉を受け入れて、男は顔を上げる。
彼は今まで、右手で女の左乳房を揉みながら、その先端を舌で舐め回していたのだ。相当に激しい愛撫だったらしく、彼の口から彼女の左乳首まで、今この瞬間も、唾液が糸を引いているくらいだった。
「ん? 左ばっかり、とは心外だな。ちゃんと平等に愛してるつもりなんだが」
悪戯っぽい口調で告げると、右手は左胸に置いたまま、左手を――それまで下半身を弄っていた左手を――、彼女の右胸へ移動。指の腹で、優しくこねるようにして、頂にタッチする。
「んあっ。ほら、言われたからって、今さら……」
「今さらでもないさ」
それまでの埋め合わせをするかのように、執拗に右乳首を弄ぶ男。続いて、そちらへ顔を近づけると、今度は唇で乳首を挟み、舌を這わせる。
まるで母の乳房に貪りつく赤子のように、それからしばらくの間、女の右胸を舐め回していたが……。
ふと、男は顔を上げる。
「やっぱりチカって、右は左より感じないんだな。右の乳首、左ほど硬くならないぜ」
愛撫する甲斐がない、といった口ぶりだ。
「……え? そんなことないわ。どっちも私、十分、気持ちいいのよ」
「それは俺のテクニックのおかげだろう」
冗談っぽく言う男の体を、女は、ギュッと抱きしめた。
自然と、彼女の唇が男の耳元に近づく。まるで挨拶がわりのように、ハムッと耳たぶをくわえた後、彼女は男に囁いた。
「そういう意味じゃなくて。それより私、もう十分、準備できてるから……。これ以上の前戯は……」
「わかってる。みなまで言うな」
男はニッと笑うと、折り重なるように抱き合った体勢のまま、器用に下半身の位置を調整した。
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