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ガチャ……
入ると同時に、酒のムワッとした独特の匂いと、母のキツい香水が渦巻いて、触手のように俺に絡み付いてきた。
この号室だけ、照明が2回り程暗いと気が付いたのは、シュウと遊ぶようになってから。
今まで自分がこんなに暗いところに居たのかと、知らなかったからだ。
玄関で靴を脱ぎ、高めの段差を上がると、目の端には、濃い赤に近いピンクの布が映った。
「…………」
母のキルティングのバッグから雑に小銭入れを取り出し、暗いこの小さな世界の扉を閉めた。
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