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一番上に説明書がある。
本体を先に取り出したい気持ちをおさえて説明書を広げる。
なぜなら、説明を読まずに機械をいじって壊したことがあるからだ。
あの時の機械に黙禱……。
そっと瞼を閉じる。
そして5秒もしないうちに目を開ける。
開いた説明書に目を落とす。
「ん~なになに?」
『注意:物理的なものは吸い込みません』
「……………………。…………………………。」
…そうですか……。
ってなんでもじゃないじゃん!
え。なんでもじゃないじゃん‼
「んだよ…。」
一人で小さくこぼす。
「…別にいいけどさ…。」
説明書を要約するとこんな感じだ。
『この機会は、人の心の中にあるものを吸い込むものである。(人間にしか効き目はない。)物理的なもの(ほこりなど)は吸い込まない。永遠に消すモードと、○分、○時間、○日、○年、選択して消すモードがある。吸い取ったものを誰かにうえつけることは不可能である。
使用方法)モードの設定をして、直方体のへこみのある側面を相手の胸に向ける。開始ボタンを押す。
使用方法の例)失恋で忘れられない人への未練を断ち切る、怒られたときに相手の怒りを吸う、勉強に集中したいとき、邪魔になっている思考を取り除く、など。
注意:永遠に消すモードでは一度吸い込んだものは戻らない。しっかり考えてから使うこと。使う前にモードを一度確認すること。必要以上に吸い続けると心の状態が無、つまり、何も考えられない、何も無い、状態になる。十分に気をつける。乱用しない。』
「乱用するなっつってもなぁ……。」
普通しちゃうよなあ……。
と思いながらも乱用すると何が起こるのか分からないので気をつけようと心に誓う。
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