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まずは何に使おうか…。
俺はそばにある机の上にあったスマホを取った。
「『なんでも吸い込むん 使用例』っと。」
検索をかけると『クラスで一番頭いいやつに0点取らせてみた』といういかにもやばそうな動画が出てきた。
つい人差し指をのばす。
いやいやいやいや、こんなやつの視聴回数増やすなんて…!個人的に嫌だ!いや、でも……。…見たい……し……。
悪用例、ということで…?いいんじゃないか…?
いや、まず誰もダメとは言っていないんだ。いや、でも…。でも…!
いや……うう…!どうする、どうする、どうする!?!?!俺!?!?!?
くっ……!うおおおおおお!!!!
俺は湧き上がる好奇心に逆らえず、気付けば動画をタップしていた。
まだ幼い子供の声が流れる。
画面を見ると、中学生くらいの男の子が黒マスクをして映っていた。
『…も吸い込むん!という機械を手に入れました!説明書には…』
先程見た内容が流れる。
その間に俺は視聴回数とコメントを確認する。
「うわ、ま…」
『こんかぃは』
突然音が大きくなってハッと動画に目を戻す。
『これを使ってぇ、タイトルにあると、お、り、クラスで一番頭いいやつに0点取らせてみようと思います!まぁ、世間一般からは乱用とみなされるかもしれませんが!…笑 …笑笑 まぁ、いつもいい点とれない俺らにとってこれは正義だと思ってます!あ、俺らの「ら」っていうのは視聴者のあなたたちです。普通このタイトル見て食いつくのは、そういう人たちだと思うんで。あ、もし違ったらごめんなさい。笑笑』
ここまで見て俺は思う。
…こいつ、……………………ウザい!
誰かがカッとするような言葉を、わざわざ言って楽しんでいやがる。
チッ
舌打ちをして、コメント欄を見る。
『よくやってくれた!』『まじでこれはスカッとする!』『スカッとした!』『ありがとうございます!』『それ欲しい!』『俺もやりたい』
……………あぁ!どいつもこいつも!!!!
それでも俺は動画をとじることはしない。
なぜなのか…。なぜなのか。…見届けなければいけない気がするからだ。
見てやる。最後まで見てやる!仕方ねぇ見てやるよそこのお前!
『てことで、いってみましょう!』
そう言ったその子は、悪役のくせにきれいな目をしていた。
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