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それでも自称いい子の僕は、好きな女の子の姿を目で追うのを諦める代わりに教科書を読みふけり、好きなアニメを見るのを我慢して勉強机に向かい、気になるゲーム機を買ってほしいとも言わず、友人の誘いを断って親と外出し、とても好きとは言い難い理系の大学に進学した。
さらに、実家から通える大企業に就職し、自分で稼いだお金ぐらい自由に使いたいのを我慢して、初任給はまるまる親の懐へ。到底好きとは思えない上司や後輩から押し付けられる仕事の量は減る気配が無く、それらを文句一つ言わずに笑顔で引受け、その成果をいつの間にか奪われるというサイクルはもう何度繰り返したことか。厄介事が起きれば矢面に立たされて客や取引先の顔色を伺う毎日。水面下では溺れないように必死で足をバタつかせて、人が見ているところではいつも楽しそうに、この世を泳いでいるフリをする。
赤点も、留年も、浪人もしなかった。もちろん犯罪もやってない。今のところ特にお金にも困っているわけでもないし、体だって悪いところはほとんど無い。おそらく世間一般的には、順風満帆の人生だ。
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