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昔から人の顔色を見るのだけは得意だ。何をして欲しがっているのかを予想し、先回りしてやってあげると好感度はあがる。でも一歩間違うと誰かの下僕のような扱いになることもある。とにかく僕はビクビクしていた。
最近は会社の飲み会にも行っていない。人と関わることに疲れてしまったし、今は逃げ込むのにうってつけの我が城もある。わざわざ窮屈な思いをしに、戦場へ向かうことなどないのだ。
テレビをつけると、クリスマス特集の歌番組が流れていた。ラブソングなんて、あまりにも喧嘩を売っている。すぐに消した。
開けっ放しのカーテンの向こうに見えるのは地上五階の夜空。闇の中で、外灯が放つ光に照らし出された細雪がキラキラ踊っている。
「サンタ、来ないな」
今年もきっと来ない。
それでも、いつか本物のいい子になって、奇跡みたいな良いことがやってきたらいいのに。って思いながら、冷える窓際に立ち尽くしていた。
――ピンポーン
インターホンが鳴った。もう二年も経つというのに、この家にはまだ、僕と引越し業者以外の人が入ったことが無い。
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