観音様系彼女の年末大セール

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 僕は、ネットで買った本でも届いたのかと思いながら、印鑑を握りしめて玄関へ向かう。宅配業者ならば、こんなジャージ姿でも恥ずかしくはない。 「はーい」  何も考えずに鍵を開けて、ドアを開けた。 「へっ?」  ここで一つおさらいしよう。  いい子は、インターホンが鳴っても、すぐさま扉を開けてはならない。ちゃんと誰が来たのかを確認してから解錠するのが鉄則。なぜなら、そこに予想外の人物が立っていた場合、とてつもなく挙動不審になってしまうからだ。現に僕は今、大切な印鑑を落っことしそうになっている。 「こんばんは」  目の前に立つ女性の名は、多恵子さん。ダッフルコートにチェックのマフラーを巻いている。確か一年半ぐらい前に、僕の職場へ異動してきた子で、入社年から逆算すると、おそらく僕よりも四歳下というアラサーだ。名前の通り、昭和っぽい奥ゆかしさを醸し出していて、僕が密かに憧れている人物でもある。  だけど、どうしてここに?
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