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「あなたは、悪い子です。クリスマスには、私というサンタが来たにも関わらず、相変わらず意気地がないままでした」
たぶん、もっちさんも少なからず私のことを好いてくれていると思う。なのに、あの場限りの関係で終わらせようとしていたのだ。ギルティ!
「でも、来年から心を改めるのであれば、私から一足早いお年玉を差し上げましょう」
「お年玉ですか」
「はい。私の気持ち知ってる癖に、もう知らないフリをするのはやめてください」
私は持ってきた大荷物を床に下ろすと、ダッフルコートのポケットから紙切れを一枚取り出した。
『この紙を持ってきた人に何でも言うことを聞いてもらえる券』
紙切れを受け取ってしまったもっちさんは、紙と私を何度も見遣る。
「もう、間違えないでくださいね」
もっちさんは、それでも何かを迷っている様子だった。私はもう、迷わないでほしい。私を、選んでほしい。
その時、持ってきた紙袋の中身を見て、変なことを閃いてしまった。それは、うちにあった古いゲーム機。その箱に貼りっぱなしになっていた赤いシールを慌てて剥がすと、自分のほっぺに貼り付けた。
「今ならば、大安売りです」
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