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「今までよくがんばったね。多恵子の家はここにあるんだよ。いつでも帰っておいで」
ちゃんと泣けたのは、久しぶりのことだった。
やっぱり私は、大都会では生きていけない人種なのかもしれない。私は田舎で一からやり直すことにした。
とは言え、プータローをするわけにもいかない。いい歳した大人が働かず生きていける程、世の中甘くないのだ。私は、再就職するために、地元では大きな会社の中途採用に応募した。すると、私の前職での経験や、地元出身であることなどが買われて雇ってもらえることになった。
仕事は、基本的に事務ばかりだ。正直言って、前の会社と比べれば何もかもが緩いし、仕事内容も楽。だからと言って、新人の癖に手を抜いてはクビになるかもしれないと思って、いつも笑顔は絶やさず、どんな仕事も進んでやる。そうやって、少しずつ周囲との信頼を築いていった。
そして、広報部へ異動になったのは昨年の四月のことだ。それまで私はいろんな部署を転々としていたけれど、ついに前職に近い業務に就くこととなったのだ。
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