その10

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その10

約束された血の匂い/その10 麻衣 「この前神社で聞いた件に行くわ。あんた、久美にはさ、”俺はバックについても、その対価でクスリなんか強要しない”って…。そう言ってたわね。その話の前後では私が廃人状態で云々とか、相和会から援助はずされたとかだったわ。ということはさ、その比較対象は私ってことよね?」 「えっ?まあ、そうですけどね…、だから、それがどうしたって…」 「あー、もう、ズラズラうるせえって!”そうです”の一言だけでいいんだよ、ボケ!」 「うぐっ!」 私はアツシのふくらはぎあたりを蹴りつけてやった ... 「いいか、お前、私がクスリで警察入って証言してきたことは、正規のモンなら、統一通告で聞いてるはずよ。なのに、私がバック押してもらう対価で、一体、誰からクスリを強いられたってのよ!」 「いや、それは…」 「お前の返事待ってるとまどろっこしいから、こっちの見解を先に言ってやるよ。新宿のJってクラブのエリカという女に、統一通告以外の”憶測”漏らしたな」 「うっ…、なんでそれを…」 さすがに青ざめて、地べたから顔を私に向けてるよ あーあ…、首伸ばして、どう見ても亀だ(爆笑) ... 「その女が出どころで、関東のある組連中に回ったらしいんだ。それ拾って、星流会がネタの突きとめに動いてる。そういう情報も入ってるんだよ。お前のその口が、組にどんだけ迷惑かけてんのか、その辺自覚あんのか?」 「…」 「それとは別に、砂垣とも仲良しになっちゃって、久美との復縁を頼んでたんだろう?そんで、神社での私との約束、数週間で破った。お前の行動なんか、こっちはすべて承知してるよ。さあ、言い分あるんなら言ってみろ。聞いてやるから」 「ああ、ホントすいません。あの女には、おだてられて…、つい…。軽い気持ちだったんです…。あのう…」 コイツの顔面はすでに歪んでる ... 「お前よう、逆髪神社で久美に絶対に近づかないことを、命にかけて誓ったんだぞ!バッジにもな。組と私、両方を裏切ったんだ。まず、私だ。約束破ったんだから、少なくとも、私にはお前をぶっ殺すことが出来るわね」 「…」 この野郎、さすがにもう、言葉も出てこないようだ 「この、小心者の最低野郎が!私は定男さんを意識的ではないにせよ、局部を切りつけ、自殺に追い込んだよ。こっちも暴行されていたんだし、言い分がないこともない。でも、相馬さんの前で、殺される覚悟はした。その覚悟をもって、私を見込んでくれ、力を授けてくれたんだ」 このことを”事実”として周知しているのは、この場では倉橋さんだけだ だが、剣崎さんには”時効”を確認しているし、倉橋さんにもここで明かすことは事前に了解をもらっていた でも、他の人たちはちょっと驚いてる様子だ ... 「…その私にとって、お前みたいな汚ねえクソは、惨たらしく処刑されるべきと確信してる。今、ここで私が手を下すよ。勝田さん、そこのチェーンソー貸してくれますか?コイツ、切り刻んで出血死させてやります」 ああ、でも、使い方知らないから教えてもらわなくちゃ 「わー、やだー!殺さないでくれ!親分、奥さんを止めてください!お願いします。この人、ホントにやりますよ!」 ハハハ…、これだけ極道の面子がいるってのに、私を一番に恐れるなんてね… まったく、なんなんだかだわ…(爆笑)
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